2023年1月13日(金)に、教職員組合榛原支部青年部互助会の学習会で講演させていただきました。
以下、長文ではありますが、発表原稿を転記いたします。
では、まず自己紹介からさせていただきます。
松浦静治(まつうら せいじ)と申します。1974年6月21日生まれの48歳。新潟県長岡市寺泊町に生まれました。1997年に新潟大学教育学部小学校教員養成課程数学科を卒業し、2000年まで新潟県の小中学校で講師として働きました。
2001年に、結婚を機に静岡県に転居し、小学校教諭として勤務してきました。
2009年4月~2013年3月吉田町教育委員会社会教育課に4年間出向しました。
2013年4月から小学校教諭に復帰しましたが、2019年3月に小学校教諭を退職しました。44歳でした。
その年の2019年11月に任意団体Study Like Playingを立ち上げて、今に至ります。
今日、私がお話したいことは、学校と地域が共に新しい教育の形を作っていきましょう、ということです。
先ほどお話ししたように、私が吉田町教育委員会に出向していたときに、地域には教育に関わりたいと思っている人がたくさんいるということに気付きました。
そして、今、学校の教員の働き方のブラック化が問題となり、これまでたくさんのことを抱え込んできた学校が、いよいよたくさんのことを手放さなければならなくなりました。しかし、今、学校がさまざまなことを手放しても、それを家庭も地域も受け止めることができません。その仕組みができていないからです。そして、かつて「ゆとり教育」の時にそうだったように、放り出された子どもたちの受け皿になるのはゲームやYouTube、TikTokです。
だから、早急に、地域で子どもを育む仕組みをつくらなければなりません。その上で、学校が担ってきたこと手放していきましょう。
そして、今から私は、地域でどのようなことができるのか、というお話をします。その上で、地域でやること、学校でやることを仕分けしていきましょうというお話をしたいと思っています。
私が学校の教員を辞めた理由ですけれども、学校は勉強を教えるけれど、生き方を教えていない。ちょっときつい言い方ですが、あなたはどんな高校に行きたいのか?どんな大学に行きたいのか、あるいは就職したいのか?大人は子どもたちに質問します。「あなたの好きなことは何?」「やりたいことは何?」「なりたいものは何?」と。しかし、今の日本は、多くの子が「別にない」「好きなことは特にない。強いてあげればゲーム?」とか「やりたいことは特にない。仕事は厳しくなくて給料がいっぱいもらえるところに就きたい」という人が多いのではないでしょうか。日本の学校教育を通ってきても、自分の好きなことも、なりたい自分も思い描けないという状況はまずいと思うのです。
また、英語が小学校から始まったりして、机の上での学習が増えてしまっています。プログラミングの導入なども言われていますが、それを指導する時間は割り当てられていません。今までの時数の中で「工夫してやりなさい」と丸投げです。全国学力テストでも、その前に過去問をやらせているなんていうのが報道されましたが、そんなのは公然の秘密としてやられてきました。その影響を受けて、遠足や陸上競技会、合唱コンクールなどの体験的な活動がどんどん減らされてしまっています。キャンプなども、昔は学校でやっていたところもありますが、夜中に不審者がテントに侵入したらどうするんだ、とか、屋外で調理しても衛生的なのか、と心配する保護者がいたりして、学校行事としてはやりにくくなっています。
また、なんでもかんでも学校にやってもらおうという考えもあります。お年寄りと交流するのも、障がい者と交流するのも、学校でやってもらおうという雰囲気があると思いませんか?そして今、学校の一番の使命は「託児」になってしまっています。子どもを預かっておいてもらわないと、大人が働きに行けないからです。
一方で、学校の先生たちは忙しい。残業時間が過労死ラインを超えていて、ブラックな職場だと言われて、教員になりたいという人がどんどん減っています。だから、学校でやっていることをどんどん地域や家庭でやってもらおう、ということが言われています。部活動も、学校でやるのではなく、地域でやってもらおうという動きです。しかし、今現在は、それを受け止める仕組みが地域にも家庭にもありません。このまま、学校がいろんなものを手放して、地域や家庭に任せます!と宣言しても、結局、損をするのは子どもたちです。
ですから、私は、地域で子どもたちを教育する新しい仕組みを作りたいと思って、教員を早期退職しました。教育委員会で社会教育を4年間経験させていただいた私がやらなくて、いったい誰がやるのか?そんなことを思って、現在挑戦しています。
私は、学校が「嫌い」になって、教員を辞めた訳ではありません。学校には、とても素敵な子どもたちの成長のドラマがあります。そのドラマに関われる教員という仕事は、やりがいのある仕事です。そして、尊敬する先生方もたくさんいます。でも、誰かが地域で子どもを育む仕組みをつくらなければ、現状が変わらないか、子どもたちが損をするかのどちらかです。ですから、学校は尊敬する先生方にお任せして、私が地域で子どもを育てる仕組みを作ってみようと思って退職しました。教員を退職してもうすぐ4年になりますが、少しあせりながら、しかし、しっかりと地道にその仕組み作りをしています。
地域での学びの形を作りたいと思ってやってきました。この4年でやりたいと思っていたことの骨格ができてきたと思っています。しかし、まだか細い骨といったところです。これからは、筋肉を丈夫にして、太くて力強い取組みにしていきたいと思っています。
それでは、どんな取組みをしているのか、一つずつ紹介させていただきます。
一つ目は放課後ひだまり教室という取組みです。これは、現代版の寺子屋だと思っています。この夢づくり会館の隣にある障がい者のためのグループホーム「陽だまり」というところで行っています。
このグループホームには知的障がいのある方が10人程住んでいて、スタッフさんがお世話をしている施設なのですが、ここを運営している認定NPO法人フリースペース・うぇるびーの人たちが「障がい者だけでなく、みんなが利用できる施設にしたい」ということで、誰でも利用できるカフェ「ひだまりカフェ」を開設して、子ども食堂も実施していました。それを知った私が、「何かお手伝いできることはないですか?」と言ったところ、「もっと子どもたちが来てくれたらうれしい」ということで、「それならば、子どもたちの宿題を見てあげたら、きっとたくさんの子どもたちが来るようになりますよ」ということで、始めました。毎日10人~15人くらいの子どもたちが来て宿題をしているのを、スタッフと地域のボランティアさんが見守ってくれています。
今はコロナで交流を控えていますが、コロナ前は、入居している障がい者の方との交流もありました。ある方で、何か不安のことがあるとパニックになってスリッパを投げるという方がいらっしゃいました。それを見た子どもたちは「え~、何?こわい」という表情をしていました。そこで、私は子どもたちを呼び集めて「あの人はパニックになってスリッパを投げるけれど、実は投げる方向を考えているから」と話をしました。すると、しばらくしてまたパニックになった時に、子どもたちが「わかった!」と言ってきたのです。「今ね、スリッパを投げようとして、ガラスの方だったから、投げるのをやめて、ソファーの方に投げた」と。そこで私は「そうだよ。あの人はパニックになっても、ちゃんと投げる方向を考えているから、ぜったい人がいる方には投げないから大丈夫だよ」と言ったら、子どもたちは落ち着いたようでした。それからまた、その方がパニックになったときに、当時、小学校4年生の女の子でしたけれども、その人のところへ行って「どうした?何かあった?大丈夫だよ」と声をかけたんですね。ふだんから障がいのある方と接していれば、「怖い!」という感覚はなくなって、自然な形の交流ができるようになるのですね。
また、地域の方が、宿題が終わった子に、針と糸でお手玉づくりを一緒にやってくれたり、将棋をやってくれたりしました。プランターで植物を育てるようなミニ農業体験をしたり、火をおこして焼き芋を作ったりする体験活動も取り入れるようにしています。また、北海道の寺子屋ALOP SCHOOLさんとZOOMをつないで、オンラインで交流したりもしています。
保護者からの相談も受けることがあります。担任の先生から「この子は勉強がわかっていないようだから、特別支援学級に移った方がよいのではないでしょうか」と言われたと、保護者の方から相談されました。私は「じゃあ、しばらく放課後ひだまり教室に通わせてみてください」ということで、その子の宿題を見守りました。確かに、来たばかりのころは勉強が分かっていない様子でしたが、丁寧に宿題を見てあげていたら、3学期の面談で「勉強も理解できているみたいなので、特別支援学級に移らなくても大丈夫そうですね」と言われたと、うれしそうに話してくれました。そのほかにも「うちの子はおちつきがなくて」とか「算数がわかっていなくて」という子を預かって、勉強を見てあげています。
私も学校にいましたから、これはよくわかります。先生方だって「あぁ、この子勉強がわかっていないな」ということは気付いているのですよね。でも、それを救ってあげることができない。授業の時間に一人だけ特別に見てあげることもできませんし、休み時間には友達と遊ばせてあげたいし自分も宿題の丸付けがあるし。放課後に残して勉強を見るということも、ほとんどできません。「この子は勉強がわかっていない」と知っていても、それを救ってあげる手段がないのですよね。ですから、それを地域でやったら良いと思うのです。
夏休み、冬休み、春休みの長期休みや、新型コロナの休校中は、朝の8時から子どもを預かっています。宿題をやるのを地域ボランティアの方と見守っています。
学校が休みでも、保護者の方が休みではなくて、子どもたちの預け場所に困っているご家庭はたくさんあります。そんな子どもたちの受け皿を地域で作っています。
長期休み中は時間がたくさんあるので、自由研究にも挑戦します。写真は、ふかふかパンケーキを作りたいということで、自分たちでタブレットパソコンで作り方を調べ、材料を買ってきて実際に作っているところです。
また、地域でのレクリエーション大会にも参加させていただきました。右の写真は社会福祉協議会さんが主催したニュースポーツ「ラダーゲッター」に参加させていただいた時のものです。
子ども食堂をやっているひだまりカフェからの無料昼食提供も、夏休みの間に4回実施しました。また、8月は日本にとっては戦争で原子爆弾が投下されて、8月15日に降伏して終戦した特別な月ということで、戦争に関する学習もしました。
2021年の9月からは、不登校の子の居場所を作ろうと「フリースクールひだまり教室」を始めました。放課後ひだまり教室をしている部屋で、学校に行けない・行かない子たちを受入れています。ここでは学校の勉強に限らず、自分の興味があることを学んでよい場にしようと思っています。ひだまりベイスというのは、フリースクールとして毎日こっちに通う訳ではないけれど、学校に行けない時にいられるように”ちょこっと利用”ができるようにしています。
日本の学校は、いわゆる普通の学校に行けないとなると、その他の選択肢がほとんどありません。みんなに見つからないように、家でひっそりとして過ごしていないといけないという雰囲気があります。しかし、私は、もっといろんな形態の学びの場があった方がよいと思っています。自然体験の中で学んでいく学校があったらよいと思いますし、もっとパソコンなどのICT機器を使う学校があってもよいと思いますし、外国語で勉強をする学校なんかももっと選べたらよいと思うのです。オルタナティブとは「選択が可能な」という意味です。
週末の学校が休みの日には、いろいろな体験活動を提供しています。私が学校の教諭を退職した理由でもお話したように、子どもたちにさまざまな体験の機会をちゃんと提供する仕組みを作りたいと思っているからです。
キャンプの中には、子どもたちにとって、とても大切な要素が詰まっていると思っています。テントを張って自分の寝床を確保すること、火をおこして体を温めたり、料理を作ったりすること。また、花火で遊ぶこと。川遊びや森遊びをして、自然にふれること。一緒にキャンプをしている人と役割分担して協働して過ごすこと。こういう大切なことがキャンプにはたくさんあると思うのです。
学校では安全性や衛生面から、みんな一律にキャンプをするという訳にはいかなくなってきています。地域でキャンプ教室を開催して、そこに参加させたいという意思のある親と子どもが申し込んでくれば問題ないと思うのです。
農業体験教室も行っています。今の子どもたちは「消費」に偏って生活しています。ふだんの生活の中で何かを生産するという機会がほとんどありません。お米や野菜を作る大変さを知りません。その結果、食べるか食べないかの判断基準がおいしいかおいしくないかだけになってしまって、食料を生産した人たちの苦労も、良いものを消費者に届けたいという思いも知らないまま、平気で嫌いなものを捨てるという人がとても多いです。
学校で「いただきます」をさせていると思いますが、その「いただきます」には、いったいどれくらいの気持ちが入って言っているのでしょうか。
私は、種まきや田植え体験をしたり、収穫して根っこをとったり、エダマメを枝から外したりして大変さを経験してもらったり、収穫したトウモロコシを、その場でゆでて食べたりしておいしさを実感してもらうことで、食べ物に対する考え方を育てていきたいと思っています。
今のこの時期は味噌を仕込むのによい時期です。気温が低くてカビが発生しにくいからです。でも、そんなことを気にしている子どもはほとんどいないかもしれません。でも、自然にはそれにふさわしい時期や旬というものがあります。その他、梅干し作り、そば打ち、パン作り、ミニ門松作り、松ぼっくりを使ったクリスマス飾り作りなどをやっています。「買ってくる」のが当たり前のものを、自分たちで作ってみると、物や食べ物に対する考え方が変わると思うのです。こういうことを地域でやる仕組みが作れれば、学校でやらなくても済みますし、子どもたちに価値ある体験を届けることができると思うのです。
島田市には徳川家康と武田信玄・勝頼が争った諏訪原城の跡があります。ドウダンツツジのきれいなどうだん原という場所や、国の天然記念物の大杉がある千葉山があります。そういった場所を子どもたちと探検するイベントを行っています。そこについて詳しい人に解説してもらうと、その場所の凄さがより強く感じられることがあります。このような機会を経験することで、自分のふるさとに対する愛着を育てることも、大切なことだと思っています。
しかし、これを学校行事としてやろうと思うと、なかなか大変ですよね。先生方が下見に行かなければならないし、そこについて解説してくださる地域の方と連絡を取らなければいけません。雨天延期だと連絡が必要ですし、今の時期はコロナで中止なんていうこともありえます。これらのことを地域でやる仕組みができたら、学校でやらなくてもよくなると思うのです。
「将来の夢がない」とか「自分の好きなことがわからない」というのは、実は無理もないことなのです。子どもたちは、みんな同じ教科書を渡されて、その中身をどれだけ暗記したかを競わされて、学校から帰ってきたらまず宿題で、早くお風呂に入って寝なさいでは、自分の好きなことを探させてもらうことも、それを磨かせてもらったこともないのです。ですから、私は、子どもたちが自分の好きなことを探して、それを磨くことができる場を作りたいと思っています。
それが地域型クラブ活動です。これは、放課後ひだまり教室とも連動していて、子どもは学校が終わると歩いて放課後ひだまり教室までやってきます。そして、希望者は時間になったら英語クラブに行ったり、プログラミングクラブに行ったりします。そして、クラブが終わったらまた放課後ひだまり教室に戻ってきて、おうちの人が迎えにくるのを待ちます。保護者からしたら、宿題も終わって、習い事もできているという状態です。親が送り迎えをしなくてもそれが終わっているのです。
今はまだ、英語クラブとプログラミングクラブの2つですが、このクラブをもっと増やしていきたいと思っています。地域の人でお菓子作りの好きな人が講師になって、子どもを集めてお菓子作り クラブを作るとか、木工クラブを作るとか、歴史クラブや鉄道クラブなんていうのも良いと思います。
また、中学校のクラブの地域移行の時の受け皿になれたらと思っています。
今までの話の中に何度か出てきましたが、ひだまりカフェは、障がい者のグループホーム陽だまりの中にある、誰でも利用できるカフェです。このカフェは、この施設を障がい者だけのものにしないために作られました。そして、子ども食堂も行っており、子どもが来たら無料でパンセットやおにぎりセットなどが食べられます。また、この取り組みに賛同してくださっている方がお野菜やパンを無料で提供してくださっています。クリスマスなどには交流イベントを開催して、障がい者も子どもの地域の人も一緒になって楽しい時間を過ごしています。
この4年間の活動の中で、他の団体との連携も生まれています。
「みらい&アカデミー」という東京の教育関連の会社です。こちらの会社はオンラインで子どもたちに新しい学びを提供しています。「起業家」「プロダクトデザイナー」「メディアプロデューサー」「宇宙研究者」などといった、たくさんの職業について、子どもたちが体験するのです。例えば、「起業家」なら、「今の社会にあったらいいなと思うサービスは何ですか?」という問いについて考えます。子どもが「習い事やスポ少の送り迎えをしてくれるサービスがあったらいい」と考えたとしましょう。そこから、「では、それをビジネスとして成立させるにはどうしたらいいか?」そういうことを小学生のうちから考えさせるのです。ひだまり教室で、何度かオンラインでの学習会を試行して、その成果を基に、2022年から本格始動しました。
キッズマネースクールとは、子どもたちに「お金」について学んでもらおうというファイナンシャルプランナーさんたちの集まりです。日本の学校では「お金」について学ぶということは、なかなかやりにくいです。やってはいけないとは思いませんが、まずもって、先生がお金や投資に関する知識がありません。また、各家庭によって「お金」に対する考え方が大きく違うので、一律にやる学校教育にはなかなかなじまないと思うのです。お金に対する学習を広く呼び掛けて、それに興味をもった家庭だけが学ぶということでよいと思うのです。
それから、第一生命の金谷営業オフィスの方々が「ライフサイクルゲーム」というのを、子どもたちにやらせてくれました。平たく言うと「人生ゲーム」によく似ています。このすごろくの中で、結婚するか?子どもを儲けるか?投資信託にお金を預けるか?iDeCoをやるか?などの選択を迫られます。子どもたちは子どもたちなりに考えて、やるかやらないかを選択します。こういったゲームを通して、現代の生活の中でのお金と人生について考えるきっかけになりました。
ひだまり教室の近くに「わきっちゃん」という駄菓子屋さんがあります。おばあちゃんの代までやっていたのですが、しばらくやる人がなく、そのお孫さんが3年前に「みんなの居場所を作りたい」といって始めました。ひだまり教室に行っている子たちも、よく行っています。そして、フリースクールひだまり教室に来た子が、勉強の合間によく行かせていただいています。
ある時、わきっちゃんの店主さんから「よくお店に来てくれる子なんだけど、いつも何にも買わないんだよね。親の方針なのか、お小遣をもらっていないからなのかわからないけど」というお話を聞きました。そこで思いついたのが、「駄菓子屋さんdeボランティア」という企画です。ボランティアとしてベルマークや切手の仕分け、施設に住むお年寄りへのメッセージカードを書くと、その駄菓子屋さんで使えるポイントがもらえるというものです。この前の夏休みに実施して、20人くらいの子どもたちが参加してくれました。初倉でも実施して、来年度はもっと増やしていく予定です。
島田市の社会福祉協議会さんが、私の活動に関心をもってくださっていて、いろんな機会に紹介してくださっています。金谷地区の社会福祉協議会の方がひだまり教室に見学にきて、金谷小学区でも子どもたちの居場所作りをしたいと言って「ぽれぽれ堂」という駄菓子屋さんを始めました。駄菓子を買ってもらうことが目的ではなく、駄菓子を仲介にして、地域の子どもと大人が関わる仕組みを作ることが目的です。いづれはひだまり教室のような学習支援をやりたいと言ってくれています。
島田市の中河町にKazeNaroという放課後託児塾ができました。これは、保育士をしていた方が、もっと自由に子どもが過ごせる場を作りたいということで、私のひだまり教室に見学に来て、そのノウハウを学んで開設したものです。ひだまり教室の妹校という位置づけてやってくれています。
これらがこの4年間でやってきたことです。退職する時にやりたいと思っていたことの骨格ができたと思っています。しかし、まだまだ弱い骨格です。これから丈夫な筋肉をつけていきたいと思っています。
放課後ひだまり教室を始めてこの1月7日で3周年。この4月で教員を退職してから4年がたちますが、ようやく、ここまで作ってきました。
今後の展開としては、放課後ひだまり教室、フリースクールひだまり教室、各種体験教室、クラブSOJIの利用者を増やしていくことです。だいぶ、認知されてきていると思います。新型コロナ騒動がなかなか収まりませんが、4月から「5類」になることを信じて、今から増員の準備をしていきたいと思っています。
また、新型コロナ騒動がおさまるのを見越して、ボランティアや支援者を増やしていきたいと思っています。
他団体として、地域の鉄工所さんが「子どもたちのために何かやりたい」と申し出てくれています。それを形にしていきたいです。ライオンズクラブさんたちも、地域の子どもたちのために何かやりたいと言ってくださっています。商工会青年部のJCさんも、相談に来てくださっています。
静岡県議会に働きかけて、フリースクールやオルタナティブスクールへの財政支援を要望する決議をふじのくに県民クラブさんから上げていただきました。
ひだまり教室のような、地域での寺子屋や居場所をやりたいという相談も受けています。
そして、私自身は、フリースクールひだまり教室をオルタナティブスクールにしたいと思っています。何が違うのか?厳密な違いはありませんが、既存の学校ではなく、選択可能な学校にひだまり教室をしていきたいと思うのです。
特徴は、学年を取り払う、異年齢集団での学びです。
これまで、私たちが当たり前だと思ってきた、学年ごとに学ぶという仕組みは、本当に必要なのでしょうか?
例えば、算数・数学。学年ごとに学ぶことが決まっていて、1年間でみんなが同じことを学ぶ必要があるのでしょうか?理解が早くて、どんどん進める子は、どんどん進んだらよいと思うのです。理解が遅い子は、その子なりのスピードで、でも着実に学んでいったらよいと思うのです。一人ひとりに教科書かデジタル教材が預けられ、わからなければYouTubeなどの動画を見て学び、それでもわからなければ、既にそこまで進んでいる人に質問する。個別最適な学びができる環境はすでに整っています。 20人くらいの、年齢関係ない、小規模な学校。これからの学校はそういうものでいいと思っています。
そして、こらから話すことは「すぐに」とはいきませんが、将来的な展望として思っていることをお話しします。
放課後児童クラブと連携して、宿題の丸付けをしてあげたらいいと思います。
今、ほとんどの放課後児童クラブでは、宿題をやる時間はとりますが、丸付けはしません。その結果、子どもたちは「終わらせればいいんでしょ」というやっつけ仕事になってしまっています。先生方もおわかりだと思いますが、やっつけ仕事の宿題では学習が定着しないですよね。私は、放課後児童クラブでも宿題の丸付けをしたらよいと考えています。放課後児童クラブの支援員さんにちょっと研修をしていただいて、丸付けのしかたを覚えていただいたら、それは実現できると思っています。
また、放課後児童クラブに「プログラミン」や「英語」「クラフト」などの時間を提供できたらよいと思っています。毎日ではなくても、週に何回とか月に何回とか回っていって、放課後児童クラブで過ごす子どもたちにさまざまな体験を届けるのです。
そして、いずれは、これらの活動を放課後児童クラブでもなく、公民館でもなく、学校の施設を使ってやったらいいと思うのです。
学校の施設は、どうしても学校の先生たちのものという感覚がありますが、学校の施設は市や町のものです。放課後すみやかに地域の人に開放したらよいと思うのです。学校の家庭科室で地域の大人と子どもが一緒になって調理クラブをしたらよいと思うのです。学校の菜園を地域の人と子どもが耕したらよいと思うのです。学校の音楽室でギターを弾きたい人がギターを弾ける人から教わったらよいと思うです。図工室で竹とんぼを作ったり、体育館でボッチャをやったり、グラウンドで野球をしたりして、子どもたちだけではなく、地域の人と一緒に使ったら、学校がみんなの居場所になると思います。
学校は、今まで子どもたち全員に一律・同一に多くのことをやらせ過ぎました。そこにきて英語もプログラミングも、もう無理でしょ、って思います。
学校は教科、学習内容、事業時数を大幅削減するべきだと思います。なんなら、午前中4時間だけで、昼食から、もう学校の先生がたはかかわらなくていいと思います。
その分、学校の先生の給料は削減し、その変わり、教員に副業を認めたらよいと思います。放課後の学校に残って、みんなの居場所でカルチャースクールの先生として働いてもよいと思いますし、スポーツのクラブチームのコーチとして働いてもいいと思います。まったく違うことをしてもよいと思います。
放課後は学校を地域に開放して、施設管理責任者は行政が配置すればよいと思います。
子どもにとっては、午後は何を学ぶかは選択の時間です。地域の人と一緒に、自分が学びたいことを学んだらよいと思うのです。
改めて言いますが、地域と共につくる新しい教育は、学校の教育内容が削減されて、放課後の学校がみんなの居場所になり、学校は地域みんなの生涯学習の場になったらよいと思うのです。
つまり、一律・同一の学習ではなく、学びは子どもが選択するようになったらよいと思うのです。学校に残らずに、地域のクラブチーム行くという選択もあってよいと思います。
この放課後の学校を開放して、地域の人みんなで使うということは、なかなか学校の抵抗が大きいのですが、すでに東京のNPO法人アフタースクールというところが実現しています。子どもたちの持ち物の管理の仕方を見直しさえすれば、実現できると思っています。
学校の教育は、残念ながらなかなか変わっていきませんが、もしも、このように変わっていくとしたら、学校でやるべきこととは何なのか、先生方にはぜひそれを考えながら教育活動をしていっていただきたいのです。
学校で一律・同一に行うべきことは何か?地域で選択的にやればよいことは何か?
そんな話を、いつか、焚き火を囲みながら皆さんとお話することができたらいいなと、夢見ています。
本日はご清聴ありがとうございました。
いろいろとQRコードを載せさせていただきましたので、御自身のお持ちのところから繋がっていただけたらうれしいです。
よかったらお願いします。
お疲れのところ、お話を聞いていただいてありがとうございました。