先日、元同僚と久しぶりに会って話をしました。そこで話したことなのですが、私(松浦)は学校が嫌になったから教員を辞めたのではありません。
学校には多くの課題がありますが、子どもたちは学校で多くのことを学び、友達と共に成長しています。そこには数え切れない素敵なドラマがあります。学校はとても大事なところです。
しかし、学校がたくさんのことを抱え込み過ぎて、飽和状態に陥りました。何かを手放さなければ行き詰まってしまいます。
そこで「家庭や地域に返す」ということが言われ始めました。しかし、今の状態で子どもたちを家庭や地域に返しても、家庭や地域は子どもたちを受け止められません。そして放り出された子どもたちを受け止めるのはゲームです。ゲームをやらせておけば、子どもたちは何時間でも熱中してやっていますから。
そこで私は、学校のことは信頼する仲間である先生たちに任せて、地域で子どもを育む仕組み作りをするために教員を辞めたのです。
地域で担えること
農作業体験会
例えば、農作業体験会が地域で頻繁に開催されていれば、その分の学校の負担が軽減されると思うのです。
農作業に触れさせるために、小学校では1,2年の生活科や3,4年の理科の植物発芽や成長、5年の社会科の米作りの学習などで体験を行っています。しかし、農作業体験のために取れる時間は本当にわずかですから、野菜のお世話は先生やボランティアさんがやらないと作物は育ちません。先生たちも農作業の経験が乏しいので、困っています。お米農家さんがよかれと思って「子どもに案山子作りをやらせたら?」と提案しても、学校ではその時間は確保できません。
私は、地域で農作業体験会を開催したり、学校の農作業を手伝えるボランティアを募ったりすることができるようになりたいと考えているのです。
地域探検ウォーク
地域の城跡や史跡を巡る歴史探検ウォークや地域の商店街や工場、茶工場などを巡る散策会が定例的に行われていれば、その分の学校の負担も減ると思います。
社会科の学習では、住んでいる地域のことを学ぶために校外に出て地域探検をすることが推奨されています。しかし、そのためには、先生方が下見をして、関連施設や関係者にアポイントをとって、準備をしなければなりません。前年にやったことを参考にすることはできますが、担当する先生は毎年変わるので、また下見から始まります。しかし、その下見の時間は勤務時間には確保されていません。土曜や日曜に下見に行くのが恒常的に行われているのです。
この地域探検を学校以外が組織的に行ったり、学校の授業をサポートしたりすることができる仕組みを作りたいと考えています。
地域の人たちが子どもたちに関わる仕組み
子どもたちが、より多くの地域の大人と関わることができたら素敵だと思います。
例えばスーパーで、「あっ、畑の先生だ!」や「あっ!地域の歴史の先生!」、「縫い物を教えてくれているおばあちゃん!」という光景がたくさん増えたら、地域の大人と子どもとのつながりが温かいものになると思うのです。
イベントの開催から、つながり作りを
まだまだ数回、イベントを開催しただけですが、私のご近所の方がお手伝いに駆けつけてくださっています。借りた遊休農地を無償でトラクターで耕してくださった方もいます。「うちの畑でじゃがいも掘りをやらせてあげたら?」と声を掛けてくださった方もいます。お手玉作りを教えに何度も来てくださっている方もいます。
まだまだ仕組み作りや組織化には至っていませんが、素地作りに着手し始めたといったところです。
地域で子どもを育む仕組みを作る
私は静岡県の教育委員会社会教育課に出向して、指導主事として吉田町に派遣され、4年間その仕事に従事したことがあります。
その時、地域の人たちの中には子どもたちに関わってあげたいと思っいる方がたくさんいるということがわかりました。子どもと関われる機会を提供することができれば、協力してくださる人は必ずいると思っています。
しかし、難しさも感じています。吉田町にいた時は私は行政職員でしたが、今は一個人です。行政の後ろ楯もありませんし、収入も保障されていません。組織化して事業化するということが課題なのですが、果たして達成できるのか全くの未知数です。
しかし、誰かがやらねばならぬことなのではないかと思っています。それは教員を20年やって学校の事情も知っていて、社会教育課に4年出向させてもらった私がやらなければいけないのではないかと思っています。
さまざま人との出会いを生かして
教員を退職して1年と4か月が経過しました。この間に新しい出会いがたくさんありました。これらの出会いを生かして、なんとか地域で子どもを育む仕組みを作っていきたいと思っています!