キャンプでの調理体験

先日のブログでは、私が作りたい学校について書きました。その中で「今の学校では体験が足りない」と書きましたが、今回はそのことについて書いてみます。

体験が足りない理由

体験が足りない理由はいろいろありますが、今回は3つ。

1 教科書の内容が多過ぎて、体験を取り入れる時間がない。

2 安全性の心配からためらう。

3 先生達も体験したことがない。

1 教科書の内容が多過ぎる

教科書で教えなければいけない内容が多過ぎます。およそ20年前、いわゆる「ゆとり教育」が導入された学習指導要領改訂の時に、教科書の内容が削減されたことがありました。しかし、その後の「ゆとり教育によって日本の学力は諸外国と比べて下がった」という批判のもと、教科書の内容がまた増やされました。

そして、今はさらに「外国語」が増えました。また、学習の中で「プログラミング」もやりなさいと言われています。これまでの時間割では、どうにも授業時間が足りず、6時間目の授業を増やして対応している学校が増えました。

「体験活動」も「対話的な学び」も時間が掛かる

現在の学習指導要領にも「体験活動は重要」とは書いてありますが、体験活動を取り入れると時間が掛かりますし、体験活動を取り入れるための準備をするのにも時間が掛かります。しかし、先生たちは忙しいのでその時間を生み出すことができないのです。学習指導要領を読むと、大変立派なことが書かれていますが、それを実行するのは並大抵なことではなく、多くの学校で実現できていないでしょう。

また、さらに「対話的な学び」を行いなさいということも強調されました。確かに、先生が一方的に説明して、子ども達はノートをとるだけの授業から脱却する必要がありますが、対話的な学習で授業をしようとすると、これも時間がかかります。子どもたちのほとんどは、まだ対話的に授業をすることに慣れていませんし、この対話的な学習は30人ほどの人数での学習には向いていません。10人程度の少人数に向いている学習方法です。「対話的にやる部分と、ある程度は先生が主導で進める部分と軽重をつけて」などと言われますが、これも実現できている先生は多くはないでしょう。

このような事情から、今の学校で体験活動がやりにくくなっているのです。

2 安全性の配慮からためらう

安全性の問題も、学校で体験活動をやれない理由にあります。

体験活動は、教室の中での学習と比較すれば危険がいっぱいです。例えば、キャンプ体験を例に書いてみます。

屋外の活動ですから、虫がいます。ハチに刺されるかもしれませんし、ムカデに噛まれるかもしれません。ブヨに嚙まれると、出血したり大きく腫れたりします。マダニも感染症を引き起こすウィルスを媒介します。熊や猿が近くにいるかもしれません。テントを張るロープにつまずいて転ぶかもしれません。山や川で転び、すりむいたり骨折したりするかもしれません。燃やした火でやけどをするかもしれません。暑い時なら熱中症の心配もありますし、寒い時なら風邪をひくかもしれません。

また、衛生面でも、絶対安全とは言えません。屋外で調理した際に、サルモネラ菌などの食中毒菌が混入するかもしれません。調理器具や食器の清潔を常に保っていられるかというと、そうでもありません。夕飯に残ったごはんを、翌朝に食べても大丈夫か?というと、安全とも言い切れません。

また、テントでの夜も危険が潜んでいるかもしれません。暗い中で道に迷って、迷子になるかもしれません。不審者が悪意をもって子どもたちに近づいて危害を加えるかもしれません。イノシシなどの野生動物が、食料目当てに近寄ってきて、子ども達に危害を加えるかもしれません。突然の雷雨などから避難できる場所が確保されているとは限りません。

積極的に野外活動をさせたいと考える保護者もいますが、危ないなら体験しなくてもよいという保護者もいます。これらの心配から、学校行事でキャンプ体験を実施するのは、かなり難しいのです。

3 先生たちも体験したことがない

また、先生達の中にも、キャンプをしたことがない人がいます。農作業をやったことがない人もいます。みそ作りや梅干し作りをしたことがない先生もたくさんいます。社会が大きく変化する中で、先生達も体験活動をする機会にあまり恵まれなかったのです。

梅ジュース作り体験教室

先生方全員がキャンプをしなければならないとは思いません。全員が農作業をやらなければならないとも思いません。

しかし、教科書に書かれていることをがまんして覚えることだけで、人が豊かに暮らしていけるとは思えないのです。

子どもたちに豊かな体験活動を

子どもたちと一緒に川遊びをすると、子どもたちは生き生きと遊びます。そして、魚を見つけたり、カエルを見つけたりしてたくさんの発見をします。子どもたちと一緒に火を燃やすと、一生懸命うちわであおいで、火を大きくして喜びます。それらが子どもたちの生きるエネルギーになり、学びに向かう好奇心になると考えています。

しかし、残念ながら今の学校は、多くの子どもたちの生きるエネルギーと学びに向かう好奇心を削いでしまっていると思うのです。

学校でないからできること

そこで、私(松浦)は学校を出ました。学校を出て、地域で子どもたちに体験活動を提供しようと思ったのです。まずは体験活動をさせたいという意思を持った人に、体験の場を提供しようと思ったのです。そして、そこで体験活動を提供しながら、学校でも体験できる方法を考えています。いつか、「このやり方なら学校でもできる」という方法を紹介できるようになろうと思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です